Day5 急遽開催!高砂淳二氏・船上トーク&スライドショー(2025年6月15日)
北緯81.70度 気温氷点下1度

朝起きると、スヴァールバル諸島最北端・セブンアイランズ(Sjuøyane)という七つの群島まで北上していた。
気温は下がり、雪がチラついている。
今日はこの群島の一つ、フィップス島(Phippsøya)に上陸予定だ。
そこはホッキョクグマやセイウチの生息地として知られる無人島。
ずっと会いたかった「海のピエロ」パフィンという鳥の繁殖地でもあるというから期待が膨らむ!
4人の隊員が偵察のため先発した。
しかし、氷が岸に張り付き着岸が難しいこと、雪が激しくなり視界が確保できないという理由で上陸は困難だと判断された。
とても残念ではあるが諦めて流氷の浮かぶ北極海へと進むことになった。
上陸中止でぽっかりと時間が空いてしまったが、そうだ、いいことを思いついた。
持参してサインをいただいた『ナショナルジオグラフィック』にはシショーの作品がたくさん掲載されている。
それを見ながら撮影エピソードなどの貴重な体験談を聞かせてもらえないだろうか?
シショーは写真展開催時には必ずギャラリートークをされているのだが、私は日本一時帰国のタイミングが合わずまだ一度も参加したことがない。
7人だけを相手にトークショーとは大変申し訳ないことだが、シショーは快く承諾してくださり、我々は意義深い贅沢な時間を過ごすことができた。

シショーのお話は言葉一つひとつに自然や地球への敬意が込められていた。
生きとし生けるものに対する慈しみが溢れていた。
一般的な撮影マニュアルには書かれていない、もっと大切であろう被写体に対する心の持ちようなども語ってくださった。
このクルーザーには立派なカメラやレンズを持った多くの写真愛好家が乗船している。
山田CEOが、せっかくだからこの貴重なお話を乗客の皆さんと共有しませんか?という提案に、シショーもツアーを率いる探検隊隊長も快諾!
急遽「高砂淳二・船上トーク&スライドショー」が開催されることになった。

左・自然写真家 高砂淳二氏 右・オンリーワントラベルCEO 山田陽介氏

受賞作品『Heavenly Flamingos』
スライドが準備されたメインラウンジには、乗客のほぼ全員150人近くが集合している様子だ。
トークショーは、2022年に世界最高峰と言われるロンドン自然史博物館主催フォトコンの「自然芸術部門」で日本人として初めて部門最優秀賞を受賞した作品『Heavenly Flamingos』の撮影エピソードから始まった。
ボリビアのウユニ塩湖に佇むフラミンゴたちの幻想的なあの作品についてだ。
他にも写真を通して、生き物たちの愛おしさ、我々が住んでいる惑星・地球の美しさ、その地球の温暖化が進み環境変化で生きづらくなっている生き物たちの話、更には「高砂式・動物撮影テクニック」も披露された。
これが楽しい!
シショー曰く
「ほとんどの哺乳類は好奇心と共に恐怖心を併せ持っている。その好奇心が恐怖心よりも大きく膨らめば、野生動物たちは自分の意思で近寄ってきてくれる」
高砂式は彼らを尊重しつつ優しく背中を押すスペシャルテクニックなのだ。
例えば、カナダでアカギツネに会った時のエピソード。
そのキツネは300メートルも離れた場所にいるのだが、シショーの事が気になって意識しているのがわかる。
そこでシショーがとった行動は、自分は危険生物ではないよとアピールするため地面に寝転び、まず「名前は高砂淳二といいます。日本から来ました」と自己紹介。
そして空に向かってキツネに優しく語り続ける。
言霊や相手の発するエネルギーを敏感に察知する野生動物だ。
柔らかくニュートラルなエネルギーを保っていれば、動物はリラックスし恐怖より好奇心が勝ってくる。
そのキツネは好奇心が抑えきれなくなり、最後にはたった5メートルの距離まで近づいてきたそう。
雪の陰からシショーを覗き込む姿を捉えた写真を披露してくださったが、そのキツネの「きちゃった!みちゃった!」とドキドキワクワクしているような表情がたまらない。

この感じ、とても理解できる。
300メートル先のキツネをロックオンさせるほどのスケールはないが、私は大のネコ好きで、餌で釣っているわけではないのになぜか野良ネコが寄ってくる。
触らせてくれたりもする。
道端で可愛い子を発見すると、本当はめちゃくちゃ一緒に遊びたいのに、気の無い素振りで目を合わせず下を向いてしゃがむ。
ついでに地面の小石とか草をいじったりしてみる。
気が付けばネコが目の前にいて、私をじっくり観察しているのだ。
しかしこちらが好き好きエネルギーを全開に発してジロジロ見ていると、ネコは怯んでしまうのだろう、背中を向けて行ってしまう。
動物の気持ちを尊重し好奇心をくすぐれば、ステキな交流が生まれてくるものなのだな。
高砂式動物撮影テクニック、続くはカナダのチャーチルで出会ったシロフクロウとのエピソード。
このフクロウはリラックスして眠るとにっこり笑ったような細い三日月目になるのだそう。
シショーはその表情を捉えたいのだが、彼らは100メートル離れていても相手を察知できるほど繊細だ。
そこでシショーがとった行動は、子守唄を優しく歌うこと。
その響きがハートに届き安心感をもたらしたのだろう。
フクロウの目は眠たそうにだんだんと閉じてきて、閉じてきて、閉じてきて、ついにはにっこり三日月目に!

これぞ撮影マニュアルにはない楽しいスペシャルテクニック!
トークショーに参加した皆さん、写真を見てため息をついたり笑ったり、世界に名を馳せる自然写真家の話すエピソードを堪能していらっしゃる。
前よりも生き物と心を通わせた写真が撮れるようになることだろう。

ランチが終わり外の空気を吸おうとデッキに通じるドアを開くと、絡んできた凍てつく風に肌を噛み付かれた。
目の前には重厚感のある濃紺色の海だけが静かに広がっている。
しかしこの後、天は我々に更なる感動的サプライズを与えてくれたのだ。
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次回の第9話は、北緯80度のサプライズ!お楽しみに
<文・写真> フォトラベラーYori




