Day1-2 極地探検船オルテリウス号出航(2025年6月12日)
北緯78.22度 気温8.2度

極地探検船M/Vオルテリウス号

今日から1週間お世話になるオルテリウス号(M/V Ortelius)。

この船名は、1570年に出版された世界初で当時最も高価な印刷本であった世界地図帳の製作者として知られる、オランダ人のアブラハム・オルテリウス(Abraham Ortelius, 1527-1598)にちなんで名付けられている。

ちなみに極東に位置する日本地図が追加されたのは25年も後の1595年版、豊臣秀吉が天下統一を成し遂げた頃の安土桃山時代末期だそう。

地図に存在しない日本なのに、南蛮船はどうやって来航したのかと不思議に思ったりする。

オルテリウス号は1989年にロシア科学アカデミーの特別研究船としてポーランドで建造された。

その後2011年にオランダに拠点を置くOceanwide Expedition社に購入され船籍を変え、現在は北極と南極を往復する極地探検船として活躍している。

オルテリウス号_安全対策ブリーフィング
オルテリウス号_救命ボート
オルテリウス号_救命ボート2

全員の乗船が確認され、いざ出陣!と言いたい所だが、出航前に徹底した安全対策ブリーフィングが行われた。

乗客全員のリストがあり、救命胴衣がちゃんと着用できているか、レクチャーを受けたかなど一人ずつチェックされる。

救命胴衣を着けたままデッキに出て、自分に割り当てられた救命ボートの位置を確認する。

これが頭に入っていれば、いざという時も落ち着いて行動できそうだ。

船の左右に一台ずつオレンジ色のコロンとした物体が設置されているが、それが80人乗りの救命ボート。

船内には約1週間分の非常食も搭載されてるそう。

今時の救命ボートが潜水艦を思わせるカプセル型になっているとは知らなかった。

氷山激突タイタニックな事態はごめんだが、30分くらいなら乗って海を漂ってみたい、なんて不謹慎な事を考えてしまった。

ブリーフィングが終わると、ついに船が滑り出した。

透明感のあるひんやりした風が心地よい。

石炭鉱業が主要産業だったロングイェールビーンらしく、港の脇にどっしりと座った黒い石炭山が見送ってくれた。

スヴァールバル_石炭山
出航したのは6pm頃だっただろうか、程なくしてディナータイムとなった。

今夜はビュッフェスタイルだが、巨大なステーキ、魚料理、温野菜、デザート類などが豪快に並んでおり目が泳ぐ。

この調子だと、船を降りる1週間後には体重大幅増量間違いなしと思いながらも一通り美味しくいただいてしまった。

腹ごなしにデッキへ出てみると、もうそこは海のど真ん中。

どこから飛んで来るのか、カモメたちがクルーザーをからかうように近づいたり離れたりしながら飛んでいる。

まだ実感はないが、今自分が地球儀のてっぺん近くにいるのだと想像すると、感慨深くて熱いものが胸にジワリと広がってきた。

クルーズ初日が終わりを迎え、シャワーを浴びてそろそろ寝ようとした10:40pm、突然アナウンスが船内に響き渡った。

「シロナガスクジラが現れました❗️」

慌てて防寒着に着替え、カメラを担ぎデッキへ飛び出した。

おおおー!普通に明るい!これが白夜か!

曇り空だが、雲の間から刺す太陽の光が地球をなぞるように水平線だけを輝かせている。


なんとか間に合いクジラの親子に会うことができた。

一瞬だけ海面に現れる小さく控えめな背びれからは想像しにくいが、地球上で最大の哺乳類がそこにいるのだ。

全長は平均25〜30メートル、新生児でも全長7メートルもあるという。

親子は少しの間クルーザーと並ぶように泳いでいたが、挨拶を返してくれるかのように潮を噴き上げ、静かに姿を消していった。



次回の第4話は、極北の孤高の王者と遭遇!の話。お楽しみに。

<文・写真> フォトラベラーYori


出典:Svalbard Global Seed Vault